凧あげの原や秩父嶺あきらかに
室咲と並びて縁にものを縫ふ
雪解けの音になじみて菜を洗ふ
もとめずも心足らひぬ雛の市
受験の子いでたつ門や春の霜
春暁の不二立つ駅に子を送る
春の雪吹雪となりて行きなやむ
鴨のむれはるかに居りぬ花ぐもり
おん靴の音まぢかくて花散りぬ
春風の芝生に莚を賜りぬ
鶯はけさも来鳴くよ子の目ざめ
窓あけて耕牛けさはすぐそこに
耕しの音さくさくと朝なりき
風の音杜にあれども丘うらゝ
花の芽や土にまみれし手が乾く
駆け下りぬげんげの畦の見えしより
クローバにまろびクローバ手に冷た
海棠のよき窓あけて人住めり
離りゆく子と野には来つ草も萌え
蕗の薹とらず歩めり馴れのみち