和歌と俳句

落花

一片の落花見送る静かな 虚子

烈風に花一房の落花かな 立子

行人の落花の風を顧し 虚子

吹雪くる花に諸手をさし伸べぬ たかし

一筋の落花の風の長かりし たかし

土佐日記懐にあり散る桜 虚子

落花のむ鯉はしやれもの鬚長し 虚子

ひそひそと落花にくるる塀の内 立子

碧巌に斑々として落花かな 草城

おん靴の音まぢかくて花散りぬ 

花散るやひそかにそだつ雪の下 汀女

おほらかに行くさくら散る 山頭火

ひつそりさいてちります 山頭火

機音とんとん桜ちる 山頭火

さくらちるビラをまく 山頭火

書庫の書に落花吹雪き来しづかにも しづの女

咲きみちて散りやまぬ花風にあり 野風呂

大桜しばらくの間も散りやまず 野風呂

花散るや利根の舟宿灯りつつ 青邨

中空にとまらんとする落花かな 汀女

禅寺も落花の塵はとがめなし 青畝

自動車の深夜疾走し散るさくら 波郷

散るさくら空には夜の雲愁ふ 波郷

新聞をいらち断れば散るさくら 波郷

朝飯をわづかに食へり散るさくら 波郷

雀堂落花の風のなかにかな 万太郎

花散るや紺紙金泥の鸚鵡経 青邨 (昭和十一年中尊寺

曼陀羅に落花ひねもすふりやまず 青邨

たえまなき落花のしたのみやげうり 青邨

さらさらと落花つかずよ甃 茅舎

青淵に妙にも白き落花かな 茅舎

わが胸をよぎり音せし落花かな 汀女

ちるさくら少年白鶏を友とせり 鷹女

ちるさくら卵しろたへに生み落され 鷹女

ちるさくら病院船はわだなかに 鷹女

花散るや鼓あつかふ膝の上 たかし

青籬にこぼれてくぐる落花かな たかし

大空へうすれひろがる落花かな たかし

青籬や落花の庭をたち囲ひ たかし

籬根に濃かりし夜の落花かな たかし

一片の落花の行方藪青し たかし

花ちるや瑞々しきは出羽の国 波郷

花が散る村のポストへ看護婦が 静塔

花散るや鈍な鴉の翅あたり 虚子

肩にある落花の色は濃かりけり 汀女

輝きし落花花間にまぎれたり 汀女

桜散るしなのの人の野墓よき 多佳子

我が宿の落花に栖める四五戸あり たかし

城を出し落花一片いまもとぶ 誓子

ひそひそと落花に暮るる塀の内 林火

花散らふ夕風寒し山を前 亞浪