和歌と俳句

花冷え

花冷えに欅はけぶる月夜かな 水巴

花の冷落柿舎は今西日なる 泊雲

山影をかぶりて川面花の冷 泊雲

花の冷え蛙も鳴かぬ夜なりけり 茅舎

花冷えのともし灯ひとつともりけり 草城

花冷やはるかに燃ゆる花篝 草城

花冷をしかと覚えて碧巌堂 野風呂

花冷えや孔雀の紫金夜をめげず 蛇笏

花冷や尼の火鉢借りにけり 青邨

花冷えの炉けむりうすき山廂 麦南

その日よりなほ花冷のつづきをり たかし

花冷えや尼僧生活やや派手に 蛇笏

花冷えの畳を掃ける夕心 みどり女

花冷えや籠にゐるのはひばりの子 万太郎

花冷の火鉢にさして妻が鏝 青邨

花冷えの雨のひときは濡らすもの 万太郎

花冷の簷を雲ゆく別れかな 波郷

花冷の顔ばかりなり雲の中 波郷

花冷えの鼻梁正しく立ち並べり 鷹女

花冷えと書き大陸の春おもふ 林火

花冷の闇にあらはれ篝守 素十