和歌と俳句

西島麦南

かへるさの日照雨に濡れし蓬籠

あさあさと日の漣や蝌蚪の水

あたゝかき雨夜のを納めけり

甘茶仏虹は海棠より淡く

花篝月の出遅くなりにけり

観梅の常陸の雪に泊てにけり

現身の黒髪にほふ の前

桑解けば雪嶺春をかゞやかす

芝青む朝の鞦韆雨に濡る

花ちらす五加木の蜂や垣づたひ

春泥になほ降る雨のつばくらめ

春霰たばしる馬酔木花垂りぬ

大いなる春の火桶にもたれけり

楢林春禽微雨を愉しめる

梅紅し雪後の落暉きえてなほ

二月ひかりは風とともにあり

折りとりて蚋おふ山の馬酔木かな

白日にひとすじ煙る畦火かな

秩父嶺に雲ゐてさらず野火はなつ

野火煙る繊月馬柵にあふがれぬ

藺田の鷺東風のながれにうかみけり

東風の波塩木ひろひにしぶきけり

花冷えの炉けむりうすき山廂

花雨くだす雲八方の天に垂る