和歌と俳句

草餅

両の手に桃とさくらや草の餅 芭蕉

鶯の来て染つらん草の餅 嵐雪

花に来て詫よ嵯峨のゝ艸の餅 几董

おらが世やそこらの草も餅になる 一茶

旅人や馬から落す草の餅 子規

大仏に草餅あげて戻りけり 子規

草餅や出流れの茶をあたためて 虚子

庖厨に草餅あり京に移住の議 虚子

草餅に焼印もがな草の庵 鬼城

草餅の一ならべ蓋合せたり 碧梧桐

本尊にと持たせよこしぬ草の餅 虚子

国難や本尊の前の草の餅 虚子

草餅や廂にのれる風暖簾 爽雨

草餅や帝釈天へ茶屋櫛比 秋櫻子

草餅や野川にながす袂草 不器男

草餅に憩うて淋し一人旅 淡路女

草餅や足もとに着く渡し舟 風生

草餅のふるさとの香をいただく 山頭火

草餅の黄粉落せし胸のへん 虚子

草餅をつまみ江川遙なり 虚子

草餅や庇の下に閾なく 青畝

草餅のすこし届きし志 茅舎

草餅のやはらかしとて涙ぐみ 茅舎

草餅や御母マリヤ観世音 茅舎

たらちねのつまめばゆがむ草の餅 茅舎

今年はやこの草餅をむざとたべ 茅舎

草餅や古る山里の言雅び たかし

ふるさとや粗にして甘き草の餅 占魚

草餅の重の風呂敷紺木綿 虚子

縁側に盆に草餅庭に人 虚子

助六のうはさあれこれ草の餅 万太郎

つきつめて草餅の香となりにけり 楸邨

草餅や盆の上なる料紙筆 虚子

草餅や風にのりくる波の音 万太郎

次の間を開けて仏間や草の餅 立子

草餅をふと食ひ弱くなりしかな 波郷

草の餅似而非萬葉を憎みけり 万太郎

おほかたは力無き者ら草餅搗く 波郷

虚子死して草餅のかぐはし青し 不死男

草餅や太古の巌を撫でて来て 三鬼

草餅を頬ばりし時目が会ひぬ 立子

草餅や東歌にはのこらねど 秋櫻子

草餅や石田氏水分摂取量 波郷

草餅や鴉をわらふあづま歌 秋櫻子

草餅をつく杵音に一天鼓 爽雨

草餅に昼をすませし泰さかな 林火