葺き替し屋根にほころぶ絲櫻
人込みの春雨傘にぬれにけり
春雨にぬれて迎へぬ吉右衛門
鴨の嘴よりたらたらと春の泥
頼風の片葉の葭は芽ぐみをり
漁村の娘醜からずよ椿咲く
卒業の眉打ち上げて来りたり
籠あけて蓬にまじる塵を選る
草餅の黄粉落せし胸のへん
老婆子の船を上りて桃の里
立ちならぶ辛夷の莟行く如し
朧夜や伊達にともしぬ小提灯
燈台を花の梢に見上げたり
神にませばまこと美はし那智の滝
鬢に手を花に御詠歌あげて居り
三熊野の花の遅速を訪ねつつ
石に腰縁起買ひ読む花の下
諸人の花に詣るや道成寺
絵巻物にあるげの櫻咲いてをり
あちこちの花のたよりや京の宿
秀衡の櫻といふに憩ひけり
白濱の牡丹櫻に名残あり
花疲れ東寺の塀に沿ひ曲る
対岸の花人は唯行く如し
青ざめてうつむいてをり花の酔