家持
奥山の八つ峰の椿つばらかに今日は暮らさねますらをの伴
定家
いくたびかわが君が世にあらむためひかげのどけき玉椿かな
鶯の笠おとしたる椿かな 芭蕉
葉にそむく椿や花のよそ心 芭蕉
大井川しづめて落るつばき哉 素堂
一むしろちるや日うらの赤椿 去来
鳥の音も絶ず家陰の花椿 支考
庭前に白く咲たる椿かな 鬼貫
水いれて鉢にうけたる椿かな 鬼貫
春風にむかふ椿のしめり哉 野坡
暁の釣瓶にあがるつばきかな 荷兮
古庭に茶筅花さく椿かな 蕪村
あぢきなや椿落うづむにはたずみ 蕪村
ばらばらとあられ降過る椿かな 蕪村
玉人の座右にひらくつばき哉 蕪村
我庭を瓶に憐む椿かな 召波
赤椿咲し真下へ落にけり 暁台
鳥の嘴白玉椿きはつきし 白雄
牛の子の皃をつん出す椿哉 一茶
落したか落ちたか路の椿かな 子規
兩側の竹藪長し赤椿 子規
一葉
山ばとの雨よぶ声にさそはれて庭に折々散る椿かな
子規
十ばかり椿の花をつらぬきし竹の小枝をもちて遊びつ
子規
朝な朝な掃き集めたる落椿紅腐る古庭の隅に
弦音にほたりと落る椿かな 漱石
ひねくりし一枝活けぬ花椿 子規
御館のつらつら椿咲にけり 漱石
赤い椿白い椿と落ちにけり 碧梧桐
落ちさまに虻を伏せたる椿哉 漱石
子規
青畳四枚半の庵建てて薄茶一椀椿一輪