いち遅き船も卸しぬ青を踏む 碧梧桐
女喧しき踏青や観光列車過ぐ 山頭火
葛城の神みそなはせ青き踏む 虚子
我が思ふ孤峯顔出せ青を踏む 普羅
踏青や風に向ひて懐手 月二郎
青き踏むや離心抱ける友のさま 久女
踏青や野守の鏡これかとよ たかし
うち笑める老を助けて青き踏む 虚子
踏青や川を隔てて相笑める 虚子
踏青や古き石階あるばかり 虚子
踏青やありて渉りしさゝ流れ 烏頭子
降りかえり振り返りては青き踏む 烏頭子
青き踏む靴新らしき処女ごころ 久女
衣食足るけふのわれあり青き踏む 麦南
真直ぐに歩調そろへて青き踏む 虚子
女どちいとしあはせに青き踏む 淡路女
家の妻瞳に描きがたし青き踏む 不死男
青き踏む左右の手左右の子にあたへ 楸邨
小野をゆく靴になじみて青き踏む 蛇笏
王宮の址の青きをふみにけり 風生
とこしへの病躯なれども青き踏む 茅舎
青き踏み棹さす杖の我進む 茅舎
青き踏む叢雲踏むがごとくなり 茅舎
青き踏む今日この国土忘れめや 茅舎
青き踏む子をつれざりしさびしさに 林火
今の我僧のこころに青き踏む 占魚
健康に青きをふみて地に謝する 蛇笏
死は去りぬ一たび去りぬ青き踏む たかし
再生の双脚ほそく青き踏む たかし
四十五の大病の後青き踏む たかし
病衰の脚震へつつ青き踏む たかし
青き踏む再起の命余念なく たかし
踏青のことに蓬の踏みはづみ 爽雨
踏青や菅家謫居を心とし 青畝
踏青の影も恙を離れたる 爽雨
青き踏み己おどろく帰心かな 汀女
ふるさともひとりの道ぞ青き踏む 汀女
踏青の靴を古草くつがへす 爽雨
古草の摧けいざなふ青き踏む 爽雨
踏青の戦没の丘たのしまず 青畝
したがへる人ある如し青き踏む 汀女
身をのぼるあうらの応へ青き踏む 爽雨
富士据ゑて一日長者青き踏む 林火