熊野灘少し荒れたり梅を思ふ
梅を見て明日玄海の船にあり
風師山梅ありといふ登らばや
日本を去るにのぞみて梅十句
梅水仙王一亭の応接間
長江の濁りまだあり春の海
春潮や窓一杯のローリング
上海やつつじ倚り咲く太湖石
名を書くや春の野茶屋の記名帳
春の寺パイプオルガン鳴り渡る
色硝子透す春日や棺の上
売家を買はんかと思ふ春の旅
雀等も人を恐れぬ国の春
春雨に濡れては乾く古城かな
木々の芽や素十住みけん家はどこ
望楼ある山の上まで耕され
フランスの女美し木の芽また
霞む日や破壊半ばのトロカデロ
真直ぐに歩調そろへて青き踏む
倫敦の春草を踏む我が草履
コルシカに春の日赤く今沈む
宝石の大塊のごと春の雲
国境の駅の両替遅日かな
卓上の桃あわて咲き葉を出しぬ
舟橋を渡れば梨花のコブレンツ
両岸の梨花にラインの渡し舟
梨花村の直ぐ上にあり雪の山