後撰集・恋 平なかきがむすめ
すみぞめの鞍馬の山に入る人はたどるたどるも帰りきななむ
後撰集・雑歌 亭子院にいまあことめしける人
昔よりくらまの山といひけるはわがごと人も夜や越えけむ
藤原清正
さつき闇 鞍馬の山の ほととぎす おぼつかなしや 夜はのひとこゑ
藤原清正
鞍馬山 暗く越ゆれば ほととぎす かたらふこゑを それと知らずや
拾遺集・雑春 安法法師
おぼつかな鞍馬の山の道しらで霞の中にまどふけふかな
後拾遺集・雑歌 齋院中務
すみなるる都の月のさやけきになにか鞍馬の山は恋しき
顕季
霞たつ 鞍馬の山の うす桜 てふりをしてな をりぞわづらふ
崇徳院
鞍馬山木のしたかげの岩躑躅ただこれのみやひかりなるらむ
晶子
おばしまのその片袖ぞおもかりし鞍馬を西へ流れにし霞
虚子
楼門のありて春山聳えたり
風生万両や軒にかぶさる鞍馬山
茂吉
ともし火は昼といへども赤くしてくらまの山にうれひを消なむ
茂吉
鞍馬より四明が嶽の見ゆるとき起きふす山を間となしつる
茂吉
少年の義経のこともいめのごとき僧正谷にわれの汗垂る
茂吉
をみな等の悩む額にもふれたりし平安朝の聖おもほゆ
鷹女
火祭へ火祭へ蟻の金属音
立子
鞍馬山今は常山木の花ばかり
多佳子
火祭の戸毎ぞ荒らぶ火に仕ふ
立子
鞍馬路の野菊みぞそばきりもなや
蛇笏
夕焼けて空の三日月鞍馬路
蛇笏
昼月のたかくて秋の鞍馬路
林火
顔出せば鞍馬の闇よ秋の宿
貞徳
初とらの泥障で参れ鞍馬寺
言水
初寅や道々匂ふ梅の花
虚子
午の鐘響き渡るや花供養
虚子
うづざくら一嵐して花供養
蛇笏
雲しろむけふこのごろの花供養