よみ人しらず
めづらしや昔ながらの山の井はしづめる影ぞ朽ちはてにける
大江興俊
宇治河の浪にみなれし君ませば我もあじろによりぬべきかな
小弐のめのと
吹きいづるね所たかくきこゆなりはつ秋風はいさてならさじ
返し 大輔
心してまれに吹きつる秋風を山おろしにはなさじとぞ思ふ
よみ人しらず
はかなくてたえなんくもの糸ゆゑに何にかおほくかかんとぞ思ふ
亭子院にいまあことめしける人
昔よりくらまの山といひけるはわがごと人も夜や越えけむ
よみ人しらず
雲井ぢのはるけきほどのそらごとはいかなる風の吹きてつけけん
返し、女のはは よみ人しらず
あま雲のうきたるごととききしかどなほぞ心はそらになりにし
元良親王
やればをしやらねば人に見えぬべしなくなくも猶かへすまされり
素性法師
もち月の駒よりおそくいでつればたどるたどるぞ山は越えつる
藤原敦敏
よろづ世を契りしことのいたづらに人わらへにもなりぬべきかな
返し 大輔
かけていへばゆゆしきものを万代と契りし事やかなはざるべき
よみ人しらず
散ると見て袖にうくれどたまらぬは荒れたる浪の花にぞありける
よみ人しらず
たちさわぐ浪間をわけてかづきてし沖のもくづをいつかわすれん
返し 輔臣朝臣
かづきいでし沖のもくづを忘れずば底のみるめを我にからせよ
よみ人しらず
限なく思ふ心はつくはねのこのもやいかがあらんとすらん
よみ人しらず
思ひいでてとふことのはをたれみまし身の白雲と成りなましかば
よみ人しらず
わすれなんと思ふ心のつくからにことのはさへやいへばゆゆしき
よみ人しらず
かくれゐてわがうきさまを水のうへのあわともはやく思ひきえなん
よみ人しらず
人心いさやしら浪たかければよらむなぎさぞかねてかなしき