和歌と俳句

素性法師

古今集・恋
秋風に山のこの葉のうつろへば 人の心もいかがとぞ思ふ

古今集・恋
そこひなきふちやは騒ぐ山河のあさきせにこそあだ浪はたて

古今集・恋
思ふともかれなむ人をいかがせむあかずちりぬる花とこそ見め

古今集・恋
忘れ草なにをかたねと思ひしはつれなき人のこころなりけり

古今集・雑躰俳諧歌
山吹の花色衣ぬしやたれ 問へどこたへず くちなしにして

古今集・雑歌
いづくにか世をばいとはん心こそ野にも山にも迷ふべらなり

古今集・哀傷歌
血の涙おちてぞたぎつ白川は君が世までの名にこそ有けれ

古今集・賀
よろづよをまつにぞ君をいはひつる千歳のかげにすまむと思へば

古今集・賀
いにしへにありきあらずは知らねども千歳のためし君に始めむ

古今集・秋
もみぢばは袖にこき入れてもていでなん秋は限りと見んひとのため

後撰集・雑歌
この御幸千歳かへても見てしがなかかる山ふし時にあふべく

後撰集・雑歌
音に聞く松が浦島今日ぞ見るむべも心あるあまは住みけり

古今集・羇旅歌
たむけにはつづりの袖もきるべきにもみぢにあける神や返さむ

拾遺集・春
あらたまの年立帰朝より待たるる物は鶯の声

古今集・秋
もみぢ葉のながれてとまるみなとには紅深き浪やたつらむ

古今集・秋
ぬれてほす山路の菊の露のまにいつか千年を我はへにけむ

古今集・恋
音にのみきくしら露夜はおきて昼は思ひにあへずけぬべし

古今集・恋
秋風の身にさむければつれもなき人をぞ頼む暮るる夜ごとに

古今集・恋
はかなくて夢にも人を見つる夜は朝のとこぞおきうかりける

後撰集・春
山守はいはばいはなん高砂の尾上の折てかざゝむ

古今集・賀
ひして思ひおきてかぞふる万代は神ぞ知るらんわが君のため

古今集・恋
秋の田のいねてふ言もかけなくになにをうしとか人のかるらん

新古今集・恋
逢ふことの形見をだにもみてしがな人は絶ゆとも見つつ忍ばむ

続後撰集・賀右近大将定国四十賀の屏風に
うゑてみる 松と竹とは 君が代に ちとせゆきかふ 色もかはらじ

忘れなん時しのべとぞ空蝉のむなしきからを袖にとどむる