阿倍仲麿
あまの原ふりさけみれば 春日なるみかさの山にいでし月かも
小野たかむら朝臣
わたの原八十島かけてこぎいでぬと 人にはつげよ あまの釣舟
よみ人しらず
宮こいでてけふみかのはら いづみ川 川かぜさむし衣かせ山
よみ人しらず
ほのぼのとあかしの浦の朝霧に 島がくれゆく舟をしぞ思ふ
在原業平朝臣
唐衣きつゝなれにしつましあれば はるばるきぬる旅をしぞ思ふ
在原業平朝臣
名にしおはばいざ言とはむ 都鳥 わが思ふ人は有りやなしやと
よみ人しらず
北へゆくかりぞなくなる つれてこし数は足らでぞ帰るべらなる
壬生よしなりがむすめ おと
山かくす春の霞ぞうれめしき いづれ宮このさかひなるらん
みつね
きえはつる時しなければ 越路なるしら山の名は雪にぞありける
貫之
糸による物ならなくに わかれぢの心ぼそくもおもほゆるかな
みつね
夜をさむみおく初霜をはらひつつ 草の枕にあまたたびねぬ
ふぢはらのかねすけ
夕づくよおぼつかなきを 玉櫛笥ふたみの浦は あけてこそ見め
伊勢物語・八十二・在原業平朝臣
かりくらし 織女にやどからん あまのかはらに我はきにけり
伊勢物語・八十二・紀有常
一年にひとたびきます君まてば やどかす人もあらじとぞ思ふ
すがはらの朝臣
このたびは幣もとりあへず たむけ山もみぢの錦 神のまにまに
素性法師
たむけにはつゞりの袖もきるべきに もみぢにあける神や返さん