伊勢物語・八十一
塩釜にいつか来にけむ朝凪に釣りする舟はここによらなむ
いでていなば限りなるべみともしけち年へぬるかと泣く声をきけ
いとあはれ泣くぞきこゆるともしけち消ぬるものとも我はしらずな
やまのみなうつりてけふに逢ふことは春のわかれをとふとなるべし
伊勢物語・八十二・古今集・羇旅歌
かりくらし織女にやどからんあまのかはらに我はきにけり
伊勢物語・五・古今集・恋
人知れぬ我が通ひ路の関守はよひよひごとにうちもねななむ
伊勢物語・六十九・古今集・恋
かきくらす心のやみにまどひにきゆめうつつとは世人さだめよ
古今集・恋
ねぬる夜の夢をはかなみまどろめばいやはかなにもなりまさるかな
古今集・恋
秋の野に笹わけし朝の袖よりもあはでこし夜ぞひぢまさりける
古今集・恋
ゆきかへりそらにのみしてふる事はわがゐる山の風はやみなり
古今集・雑歌
むらさきの色こき時は目もはるに野なる草木ぞわかれざりける
古今集・雑歌
おほかたは月をもめでしこれぞこの積れば人の老となるもの
伊勢物語・八十二・古今集・雑歌
あかなくにまだきも月のかくるるか山の端のげて入れずもあらなん
古今集・雑歌
世の中にさらぬ別れもなくもがな千代もとげなく人の子のため
古今集・雑歌
ぬき乱る人こそあるらし白玉のまなくもちるか袖のせばきに
伊勢物語・八十三・古今集・雑歌
忘れては夢かとぞおもふおもひきや雪ふみわけて君を見むとは