いほりおきししでのたをさはなほたのむわが住む里に声したえずば
古今集・恋
見ずもあらず見もせぬ人の恋しくはあやなくけふやながめくらさむ
見も見ずも誰と知りてかこひらるるおぼつかなみのけふのながめや
知る知らぬなにかあやなくわきていはむ思ひのみこそしるべなりけれ
古今集・恋
浅みこそ袖はひつらめ涙河身さへながると聞かばたのまむ
忘れ草おふる野辺とは見ゆらめどこはしのぶなりのちもたのまむ
つれづれといとどここちのわびしきにけふはとはずてくらしてむとや
いでてゆく君をいはふとぬきつれば我さへもなくなりぬべきかな
別るとも思ほえなくに忘らるる時しなければおもかげにみゆ
伊勢物語・八十三・新勅撰集・羇旅
枕とて草ひきむすぶこともせじ秋の夜とだにたのまれなくに
咲く花の下にかくるる人をおほみありしにまさる藤のかげかも
秋の夜ははるひ忘るるものなれや霞に霧やちへまさるらむ
きのふけふくものたちまひかくろふは花のはやしを憂しとなりけり
古今集・恋
おほぬさと名にこそたてれ流れてもつひによるせはありとこそきけ
伊勢物語・四段・古今集・恋
月やあらぬ春や昔の春ならぬ我が身ひとつはもとの身にして
流るとも何とか見えむ手にとりてひきけむ人ぞ幣としるらむ
世の中をいとひがてらに来しかども憂き身は山の中にざりける
あかねどもいはにぞかふる色みえぬ心をみせむよしのなければ