伊勢物語・八十一 業平
塩竃にいつか来にけむ朝なぎに釣する舟はこゝに寄らなむ
古今集・哀傷歌 貫之
君まさで煙たえにししほがまのうらさびしくも見えわたるかな
古今集・東歌
陸奥はいづくはあれどしほがまの浦こぐ舟の綱手かなしも
新古今集・哀傷 紫式部
見し人の煙となりし夕べより名ぞむつましき塩釜の浦
俊頼
いつしかとかすみにけりな塩釜の浦ゆくふねの見えまがふまで
俊頼
塩釜の 煙にまよふ 濱千鳥 おのが羽がゐを なれぬとやなく
俊成
いづくにかたとへていはむ朝凪て霞たなびく塩釜の浦
新古今集 慈円
ふけゆかばけぶりもあらじしほがまのうらみなはてそ秋の夜の月
新古今集・雑歌 家隆
見わたせば霞のうちも霞みけりけぶりたなびく鹽竈の浦
定家
しほがまのうらの浪かぜ月さえて松こそ雪のたえまなりけれ
俊成
夢にこそ都のことも見るべきに袖に浪越す千賀の塩釜
良経
あはれいかに心あるあまのなかるらむ月影かすむ塩釜の浦
俊成
旅のみち信夫の奥も知らるれど心ぞかよふ千賀の塩釜
定家
かすみとも花ともいはじ春のかげいづこはあれどしほがまの浦
定家
しほがまのうらみて渡る雁がねをもよほしがほにかへる浪かな/p>
実朝
立のぼる煙は猶ぞつれもなき雪のあしたの塩釜のうら
実朝
塩釜の浦の松風かすむなり八十島かけて春やたつらむ
実朝
みちのくにここにやいduづく塩釜の浦とはなしに煙たつみゆ
宗鑑
塩がまの景よき浦に月出て
子規
涼しさの猶ありがたき昔かな
左千夫
塩釜の社の裏の杉間より雨の松島かすみたる見ゆ
牧水
塩釜の 入江の氷 はりはりと 裂きて出づれば 松島の見ゆ
茂吉
松島の 海を過ぐれば 塩釜の 低空かけて ゆふ焼けそめつ
茂吉
海の雲 はれそめしかば 塩釜の 舟の帆柱の あきらけく見ゆ
茂吉
塩釜の 浦にうつろふ くれなゐの 夕棚雲を 妻と見て居り
茂吉
塩釜に 一夜あくれば おもほえず 船の太笛が しきりに鳴れり
淡路女
冷やかに斎垣を浄む宵宮かな
汀女
切通し柿の色づく漁港かな
三鬼
男の別れ貝殻山の冷ゆる夏