和歌と俳句

北上川

啄木
やはらかにあをめる 北上の岸辺目に見ゆ 泣けとごとくに

火の映る北上氷りそめにけり 碧梧桐

北上の空へ必死の冬の蝶 みどり女

北上の川上に浮く雨のかも みどり女

茂吉
水上へ とほくきらへる 北上川の 流かはりてより 年は古りにき

茂吉
うねりつつ 水のひびきの 聞こえくる 北上川を 見おろすわれは

茂吉
ふきあぐる 北上川の 風あらし 松かぜのおとの かはるばかりに

茂吉
しづかなる 北上がはの 河口を 見おろしてをり 旅を来しかば

茂吉
わたつみに 北上川の 入るさまの ゆたけきを見て わが飽かなくに

北上の渡頭に立てば秋の声 青邨

北上にかかる大橋林檎売 青邨

柳散る昔啄木のまた我が径 楸邨

曼珠沙華泣き出でし子を負ひすかし 楸邨

知らぬ顔ふりかへり笑ふ曼珠沙華 楸邨

汽車とまり大いなる虫の闇とまる 楸邨

天の川泣寝の吾子と旅いそぐ 楸邨

北上川さむざむと遠く紺たたふ 彷徨子

北上川梅天ひくく南せり 秋櫻子

櫨紅葉北上光り去るところ 汀女