和歌と俳句

天の川

片端は山にかゝるや天の川 子規

原中や野菊に暮れて天の川 子規

伊豆までは落ちず消えけり天の河 子規

天の川よしきの上を流れけり 子規

鐵橋や横すぢかひに天の川 子規

天の川凌雲閣にもたれけり 子規

天の川高燈籠にかかりけり 子規

宿もなき旅の夜更けぬ天の川 子規

山の温泉や裸の上の天の川 子規

天の川浜名の橋の十文字 子規

北国の庇は長し天の川 子規

落ちて来て露になるげな天の川 漱石

子規
寝静まる里のともし火皆消えて天の川白し竹藪の上に

晶子
天の川そひねの床のとばりごしに星のわかれをすかし見るかな


竪長の横狹の湖ゆ見出せばおほに棚引き天の川見ゆ


稻の穗のしづくの田居の夜空には筑波嶺越えて天の川ながる

晶子
たなばたをやりつる後の天の川しろうも見えて風する夜かな

静さや燈台の灯と天の川 碧梧桐

仲麿の舟は波間や天の川 虚子

茂吉
岩の秀に 立てばひさかたの 天の川 南に垂れて かがやきにけり

晶子
浪華がた浮標ごとに火をさせる海の上なる天の川かな

左千夫
蒼空の真洞にかかれる天漢あらはに落ちて海に入る見ゆ

天の川湖に波なき葎かな 万太郎

別るるや夢一筋の天の川 漱石

天の河消ゆるか夢の覚束な 漱石

赤彦
いささかの丘にかくろふ天の川のうすほの明りその丘の草

小舟して湖心に出でぬ天の川 鬼城