和歌と俳句

草市 盆の市

先匂ふ真菰むしろや艸の市 白雄

草市にねぎる心のあはれなり 子規

売れ残るもの露けしや草の市 子規

草市や人まばらなる宵の雨 子規

草市やよそ目淋しき人だかり 虚子

草市ややがて行くべき道の露 虚子

盆市の一夜をへだつ月の雨 蛇笏

草市や弟子を連れたる菊五郎 喜舟

暈召して月おとなしや草の市 草城

湯もどりの妻に逢ひけり草の市 草城

白き手に選る種々や草の市 草城

草市につきし一荷は鶏頭花 素十

草市や一からげなる走馬燈 虚子

草市にこゞめるひとの影法師 夜半

草市の立ちたるよべの塵すこし 夜半

草市や雷門へ葛西から 喜舟

草市や麻木へし折る膝頭 喜舟

草市や蓮の巻葉をさながらに 喜舟

草市や髭題目の小燈籠 喜舟

草市の香にひたり歩きけり 立子

草市に漸く多き人出かな 立子

草市の人妻の頬に白きもの 蛇笏

草市の買ひものつつみあまりけり 万太郎

草市のくさぐさの中の蓮の花 青邨

草市や小山内薫なつかしき 喜舟

草市やほつりと雨を人の上 喜舟

草市や麻木の丈に宵の月 喜舟

草市や買ふくさぐさの覚書 喜舟

草市や縄の青きにひきくゝり 喜舟

寄席の灯のともりあはせぬ盆の市 秋櫻子

草市の灯のある方へ町さびし 秋櫻子

日影して孔雀いろなる盆の市 蛇笏

草市もきのふとなりし雨匂ふ 林火

草市の燈籠売の出るところ 万太郎

草市をこよひときくに空くらき 秋櫻子

草市や風にとらるる灯をならべ 秋櫻子

草市や宵一ときの通り雨 淡路女

草市のへへののもへじのランプかな 青邨

草市の草葉つめたく手に触りぬ 鷹女

草の市をとこをみなの出て買ふも 鷹女

雑踏の中に草市立つらしき 虚子

草市の燈を白服に享けて過ぐ 林火

草市の買ひものつゝみつまりけり 万太郎

夕べ出てをとこも買ふや草の市 鷹女