草市の燈籠売の出るところ
迎火やあかるくともる家のうち
迎火やことし植ゑたる萩がもと
迎火やをりから絶えし人通り
世に白きものゝ切子の房垂るゝ
月のなき夜をかなしめる切子かな
犬遠く吠えて切子のしづかなり
走馬燈風なき夜となりにけり
送火や風さへそへる雨の中
送火をたきてもどりし膳のまへ
白い服いまだぬがざる残暑かな
台風の来るときこゆる月夜かな
百花園もとより浸り秋出水
秋出水言問團子やすみをり
日のかげりそめしおもほゆ桔梗かな
たぎつ瀬の音高けれど桔梗かな
かたまりて咲きて桔梗の淋しさよ
号外の鈴しきり聞ゆ萩の花
閉めきつてある硝子戸の夕月夜
ゆきづりに月の挨拶かはしけり
墨を濃く濃く濃くすりし月夜かな
東京の月のけしきの清洲橋
まだ十時すこしまへなる良夜かな
きこゆるは瀧の音とや曼珠沙華
草の花きのふはけふのむかしなり
駆けだして来て子の転ぶ秋の暮
玉くしげ箱根の山の花火かな
三寶寺池はまださき残暑かな
朝顔をみにゆくみちの人通り
朝顔をみていまかへる俥かな