土手三里花をはなれぬ月夜哉 子規
見に行くや野分のあとの百花園 子規
左千夫
とりどりに色あはれなる秋草の花をゆすりて風ふき渡る
園丁の指に従ふ春の土 虚子
枯蔓をもがき抜けたる鶲かな 秋櫻子
水仙に来る客ありて茶のけむり 秋櫻子
冬ざれや鶲あそべる百花園 秋櫻子
柴門や詣でじまひの福禄寿 秋櫻子
法師蝉ばかりの昼や百花園 みどり女
抱一の植ゑし侘助今に尚 みどり女
百花園春の七草籠に盛り 青邨
立ち枯るゝものなつかしや百花園 青邨
茂吉
もも草の花さきちるをこの園にまのあたり見てゆきかへりつつ
茂吉
丈のびし紅虎杖の一群を古へ人のごとく愛でつも
茂吉
この園の白銀薄たとふれば直ぐに立ちたるをとものごとし
茂吉
にごり江に睡蓮も過ぎ百草のこの花園に秋さびむとす
茂吉
さるすべりの老い立てる木にくれなゐの散りがたに咲く花を惜しみつ
咲きそめて百花園にも花多し 立子
百花園もとより浸り秋出水 万太郎
枯れ果てしものの中なる藤袴 虚子
一めんのすゝきの枯れや百花園 万太郎
甘酒や土手からのぞく長命寺 茅舎
寒む空や長命寺彼のさくらもち 万太郎
長命寺の尾長鳥けふ来ず実南天 波郷