火取虫立正案安国論を読む
老鶯の谺明るし芭蕉かげ
鶯や夏ゆふぐれの光陰に
かたつむり背の渦巻の月に消ゆ
五月闇より石神井の流れかな
河骨の金鈴ふるふ流れかな
睡蓮に鳰の尻餅いくたびも
三宝寺池の翡翠藤浪に
水底に見ゆ踏石や青芒
月見草梟の森すぐそこに
月見草蘂さやさやと更けにけり
明易き梟に覚め庭を掃く
ほうほうと梟近き門火かな
隠元を膝に娘や滝の前
霊池とて四方に泉湧く音よ
渉る子等皆滝をマタノゾキ
水を打つ夕空に月白う刎ね
虫干や父の結城の我が似合う
虫干や襟より父の爪楊枝
滝打つて行者三面六臂なす
忽ちに忿怒の那咤や滝行者
滝行者簑のごとくに打ち震ひ
行者去り滝光明をうしなひぬ