和歌と俳句

月見草 待宵草

夕焼けて薫ゆる月あり月見草 花蓑

干網に光る鱗や月見草 泊雲

月見草神の鳥居は草の中 秋櫻子

月見草まだしぼまずよ朝散歩 秋櫻子

皆咲きし今宵の蕾月見草 秋櫻子

遠き灯の一つ二つや月見草 草城

砂を踏む音ばかりなり月見草 草城

わかものの口笛娯し月見草 草城

月見草月のけはひはありながら 草城

月見草別れてのちの山霧は 亜浪

鰹船あげて明るし月見草 鷹女

月見草湾を距てて山灯る 草田男

月見草房州露は貧しけれど 草田男

項一つ目よりもかなし月見草 草田男

落つるとき花のさびしき月見草 立子

ボタ山へ月見草咲きつづき 山頭火

月見草夜潮あそびの人通ふ 月二郎

連弾の琴に朝の月見草 石鼎

ピアノより人下りたちぬ月見草 石鼎

洗髪乾きて月見草ひらく たかし

洗髪乾きて軽し月見草 たかし

庭に出て夕餉とるなり月見草 たかし

一足ごとに月見草の土手道となる 彷徨子

戻る子と行く母と逢ふ月見草 虚子

月見草灯台守の子ははだし 虚子

朝刈りの草をこぼれぬ月見草 石鼎

月見草しぼみながらも黄なるかな 石鼎

月見草小さくしぼみし赤さかな 石鼎

夕日みてけふも人立つ月見草 石鼎

母子住む假の宿りや月見草 虚子

妹が手をふるれば開く月見草 虚子

たれさがる花粉の紐や月見草 花蓑

月見草に子におくるるの母帰宅 しづの女

月見草に食卓就りて母未だし しづの女

月見草に風が吹くなり人跼む 立子

とびかかる焜炉の火の粉月見草 風生

月見草雲の夕焼が地を照らす 多佳子

月見草闇馴れたれば船見ゆる 多佳子

月見草梟の森すぐそこに 茅舎

月見草蘂さやさやと更けにけり 茅舎

箱根見ゆる鎌倉山の月見草 立子

砂かげろふ瞳にこそばゆき月見草 鴻村

月見草踏切番にいとまあり 蕪城