真菰刈る童に鳰は水走り
真菰刈童がねむる舟漕り
靄の中朝藻刈る舟見えそめぬ
朝凪や行き交ふなべて藻刈舟
藻刈舟樗の蔭へ憩ひ寄る
浮巣辺や真菰人形流れ寄る
花添へて真菰人形幼子かも
濯ぎ場に紫陽花うつり十二橋
葭切のをちの鋭声や朝ぐもり
葭切や葭のしづみて暮るる家
葭切や人顔暮れてすぐる船
葭切や小屋掛したる四ツ手網
葭切やひらけて遠き湖の景
早苗舟朝凪ぐ水脈を右左
田植笠真菰の風に耐へゐたり
月見草神の鳥居は草の中
浦浪を見はるかすなり鯉のぼり
夏帽に湖光はてなくひらけたり
家ちかく真菰の中の杜若
羽抜鶏童に追はれ蘆の中
舟の蚊火しばらく蓮を照すなり
真菰より漕ぎ出し艀朝ぐもり
青蘆の暮れて閘番泳ぎをり
葛飾や浮葉のしるきひとの門
葭切や揺れつつも鳴く葭のさき