牧草の丈なすままにほととぎす
古町のとある籬の牡丹かな
蟻の道白雲木の花降れり
萱わけて馬の来てをる 泉かな
山魚釣晩涼の光を焚きゐたり
晩涼や湖舟がよぎる山の影
古るままに葛がくれなり岩魚小屋
葛の葉を一蔓かけぬ岩魚籠
花葛の雨に立ち濡れ岩魚釣
懸崖や蟹さばしりて道通ず
入梅や蝿のとりつく花葵
桑剪るや梅雨一望の沼景色
屋根石に嶺に梅雨雲おりたるよ
追風にまろびて涼し沖津波
夏帽の日を照り返す渚かな
夏帽に照りて真白き雲ばかり
葭切や商船学校前の葭
避暑客に日落ちて富士の現れし
避暑客に月輪浪を離れけり
まつはりて美しき藻や海水着
泡浪を蹴立て上りぬ海水着
浪乗に昼餉そこそこ行きし子よ
百合赤しなま乾きなる海水着
蜑が戸に高潮ふけぬ夜光虫
浪騒ぐ礁の見ゆれ夜光虫