枯蔓をもがき抜けたる鶲かな
枯蔓引くや高枝揺れ返り
行年や一樹の柚の下を掃く
大き花圃水仙のみとなりにける
水仙に来る客ありて茶のけむり
冬ざれや鶲あそべる百花園
魚売の河豚もて来たり吾子よ見よ
わが友の酔へる恵みも慈善鍋
柴漬や古利根今日の日を沈む
柴漬や里輪のけぶりいと遠く
柴漬や鮠の四五鱗出てあそぶ
岩の門をとよもす濤に海鼠舟
海峡ほそく凪ぎて鯨のよく通る
水鳥やつばらに白き浪がしら
水鳥や安房夕浪に横たはる
浮寝鳥一羽さめゐてゆらぐ水
干蒲団荒磯の潮のつぶやける
欄の下かがよふ瀬あり干蒲団
茶の花に富士かくれなき端山かな
八重葎潰えて咲ける茶の木かな
茶の花のこぼれて似たる門辺かな
北風や梢離れしもつれ蔓
北風や絶え間も揺れて木々の蔓
冬ざれやころろと鳴ける檻の鶴