万葉集東歌
利根川の川瀬も知らず直渡り波にあふのす逢へる君かも
岡こえて利根川近し風そよぐ麦の葉末に白帆行く見ゆ 子規
利根川や漲る水に打ち浸る楊吹きしなふ秋の風かも 節
利根川の冬吐く水は冷たけれどかたへはぬるし潮目搖る波 節
利根川は北風いなさの吹き替へにむれてくだる帆つぎてのぼる帆 節
日のひかり水のひかりの一いろに濁れるゆふべ大利根わたる 牧水
芍薬の花より艶にあかばみぬ雨のはれ行く刀根の川口 晶子
刀根の川さゝ濁りして初夏の日のくれ行けば船の笛鳴る 晶子
明月や海につき出る利根の水 鬼城
利根川のふるきみなとの蓮かな 秋櫻子
利根川の鯉を売りゐる野菊かな 秋櫻子
茂吉
利根川を 幾むらがりに のぼりくる 鰻の子をぞ ともに養ふ
利根川の舸子もまじれる神輿かな 烏頭子
茂吉
利根河の舟中にして西空や紅むら雲も心にとめむ
茂吉
ものなべて黄枯にしづむ國はらをいろを湛へて河ながれたる
茂吉
豊里の駅の近くの利根川はおどろくばかりひろくなりたり
茂吉
彼岸に砂の山みえ利根河は大きひろらに音さへもなし
茂吉
目のまへのただひろらなる利根河のみなとを見れば白きしき浪
茂吉
わが心なごましめつつ利根川の川口かけて白浪ぞたつ
茂吉
秋の夜の雲のいそげる間ありて利根河のうへに月明りせり
柿の邑利根の青波ひろらなり 秋櫻子
ならび出る渡舟瓜舟利根涼し 爽雨