晶子
清らにも梅なほ咲きて伊香保路の皐月の朝にうぐひすぞ啼く
深山木を黄蝶こぼるる秋とこそ 石鼎
茂吉
しぐれ降る 伊香保の山に 夜著けり 一夜寐むとす 友とならびて
茂吉
伊香保かぜ 吹きしづまりて あけのいろ すでに衰ふる もみぢしげ山
茂吉
もみぢちる 伊香保の山を すがしみと 冬の一日を 入りつつをりぬ
茂吉
伊香保呂を おろして吹ける 風をいたみ 庭のくぼみに もみぢば散るも
茂吉
にほいたる紅葉のいろのすがるれば雪ふるまへの山のしづまり
茂吉
けさの朝は信濃ざかひとおもほゆる遠山脈の雪かがやきぬ
茂吉
笹むらは峡をひろごりしづかなる色としなれば冬は来むかふ
茂吉
もみぢばはすでにすがれて伊香保呂のやまの木立に雪消ゆるおと
茂吉
伊香保呂にもみぢ素枯れて天つ日の傾くかたの雪の山山
横になればすぐに眠たし宿浴衣 立子
秋の夜の一夜泊りの旅鞄 立子
月の下赤城榛名と指さゝれ 立子