和歌と俳句

星野立子

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胸はりて水著の娘雲の峰

伝書鳩たへず輪を描き雲の峰

河骨の花見つけたるうす濁り

背のびしてさゝへ木おさへ豌豆もぐ

電車止る静かさに湧き蝉時雨

旅馴れてトランク一つ夜の秋

鮎釣の両岸にゐて竿上ぐる

横になればすぐに眠たし宿浴衣

皿の墨すぐにかわくよ若葉風

裏庭のほかと暖か桐の花

籘椅子に掛けたる人の早や静か

縄とびの梅雨の木の間の明るさに

梅雨の人コートをぬげば服白き

舞ひ落つる蝶ありあさざかしげ咲き

穴に落ちしあたふたと早や出でし

涼風の此戸開けたるばかりにて

黴のものひろげ見て又しまひ置く

ラヂオ今ワインガルトナア黴の宿

叢にかたまり落つるあり

一人さびし端居の人に交りゐて

子の為の朝餉夕餉のトマト

一人遠く竹の落葉の降る下に

地に近き青鬼灯の葉は黄色

草中に鎌倉百合は真赤かな

もたらせし夏桔梗とてすぐ生ける