胸はりて水著の娘雲の峰
伝書鳩たへず輪を描き雲の峰
河骨の花見つけたるうす濁り
背のびしてさゝへ木おさへ豌豆もぐ
電車止る静かさに湧き蝉時雨
旅馴れてトランク一つ夜の秋
鮎釣の両岸にゐて竿上ぐる
横になればすぐに眠たし宿浴衣
皿の墨すぐにかわくよ若葉風
裏庭のほかと暖か桐の花
籘椅子に掛けたる人の早や静か
縄とびの梅雨の木の間の明るさに
梅雨の人コートをぬげば服白き
舞ひ落つる蝶ありあさざかしげ咲き
穴に落ちし蟻あたふたと早や出でし
涼風の此戸開けたるばかりにて
黴のものひろげ見て又しまひ置く
ラヂオ今ワインガルトナア黴の宿
叢にかたまり落つる蛍あり
一人さびし端居の人に交りゐて
子の為の朝餉夕餉のトマト汁
一人遠く竹の落葉の降る下に
地に近き青鬼灯の葉は黄色
草中に鎌倉百合は真赤かな
もたらせし夏桔梗とてすぐ生ける