十薬や岩を落ち来る水少し
午後の日に十薬花を向けにけり
灰屋より地蕗をもちて貴船まで
庵主の茶碗のよこの枇杷二つ
はいてきし下駄洗ひをり梅雨の川
思川渡りて暗し夏木立
下に立ち見上げし杉や夏木立
夏木立灰屋に帰る人と逢ふ
俄雨はたしてきたり貴船川
四五人の心おきなき旅浴衣
貴船路の心やすさよ浴衣がけ
杉木立人々小さく涼みゐる
烏瓜今宵の花のみな低く
茂みより花に来る蛾や烏瓜
蛾のとまる花の数々烏瓜
咲き並び花びらもつれ烏瓜
降りしきる松葉に日傘かざしけり
菓子の粉団扇の上に受けにけり
日当れどデッキ涼しやみな出づる
仔熊いま坐しぬおいらん草のかげ
蕗の葉をかざし別るゝ夕まぐれ
倒れ木をふまへ下るや蕗の沢
オホツクの夏潮に投げ煙草消え
札幌の放送局や羽蟻の夜