白秋
色硝子暮れてなまめく町の湯の窓の下なるどくだみの花
白秋
どくだみの花のにほひを思ふとき青みて迫る君がまなざし
十薬も咲ける隈あり枳殻邸 虚子
十薬や石垣つづく寺二軒 鬼城
石除るや十薬の根の白々と 泊雲
十薬のゆれさゞめくや塀雫 泊雲
茂吉
道のべにどくだみの花かすかにて咲きあることをわれは忘れず
さな猿よどくだみ食うてあてられそ 石鼎
どくだみを喰ひ渉りぬ檻の猿 石鼎
踏まれたる十薬あやがて起きなほり 立子
家をめぐつてどくだみの花 山頭火
ここもそこもどくだみの花ざかり 山頭火
十薬や雨の流るゝ小坂越 喜舟
長雨や十薬匂ふ井桁なる 喜舟
十薬や古る花は葉のかくしぬる 淡路女
十薬や岩を落ち来る水少し 立子
午後の日に十薬花を向けにけり 立子
どくだみの花の白さに夜風あり 淡路女
どくだみの花と夏天の鷺と白し 青邨
どくだみや真昼の闇に白十字 茅舎
十薬の花に涼むや楽屋裏 たかし
十薬の花の十字の梅雨入かな 波郷
十薬や世に古りそめしわが俳句 波郷
露草の瑠璃十薬の白繁り合へ 波郷
十薬の正しき花に心触る 汀女
どくだみの白妙梅雨の一日昏る 多佳子
十薬の匂ひの高き草を刈る 虚子
どくだみのくもりのひとを近づけず 林火
大甍どくだみ生えて垂れさがり 朱鳥
十薬の花ほつほつとはつはつと 万太郎
十薬の雨にうたれてゐるばかり 万太郎
十薬の花まづ梅雨に入りにけり 万太郎
どくだみに降る雨のみを近く見る 不死男
十薬の香墓に子とあそびをり 波郷
墓群よりも十薬ひしと寄り合へる 波郷
どくだみと言はじ十薬は清き花 貞
十薬の雨朝々を鬱しをり 源義
どくだみの密生神の斎く庭 誓子
どくだみの十字に目覚め誕生日 三鬼
十薬の花咲きたてや草の中 立子
十薬や山路細まり土湿り 立子
どくだみの花いきいきと風雨かな 林火