女房の古りにけるかも笹粽
僧俗の交りあはき粽かな
妻ごめに八重垣つくる二つ繭
百人一首を行列にする祭りかな
薔薇の花楽器いだいて園にいでぬ
芝居見はおしろい花に紅の花
へご鉢の水まさりけり五月雨
梅の実を必ずくるる隣あり
夜半に起きて蚊をやく母の病かな
蚊をやいて子をいとほしむ火影かな
草の家にひくくたれたる蚊帳かな
蚊遣火の煙遮る団扇かな
蚊遣火やこの時出づる蚊喰鳥
蚊遣火や縁に置いたる馬の沓
盥舟雲の峰迄至るべく
磐石の微動してゐる清水かな
旅人の立ちよる裏の清水かな
橋涼み笛吹く人をとりまきぬ
打水や空にかかれる箒星
打水や石燈籠にともすべく
早鮓や人をもてなす夕まうけ
法華経を枕にしたる昼寝かな
病む母に父の形見の土用干
蓮臭き佛の飯を茶漬かな