和歌と俳句

明け易し

足洗てつゐ明安き丸寐かな 芭蕉

廻廊に夜の明やすし厳島 涼菟

明やすき夜をかくしてや東山 蕪村

明やすき夜を泣児の病かな 白雄

木をつみて夜の明やすき小窓かな 子規

明け易き頃を鼾のいそがしき 子規

書置の心いそぎに明け易き 子規

引窓をからりとそらの明け易き 漱石

明易き閨に妹あらず炊ぐらん 虚子

山の温泉の一号室や明易き 虚子

水神と山鬼と夜を明易うせり 碧梧桐

明易き第一峰のお寺かな 虚子

明易き物嵩川岸の人声に 碧梧桐

家鳩や二三羽降りて明易き 鬼城

大阪や月の屋根屋根明け易き 草城

腰高に寝たる女や明け易き 草城

うどんげの蝶となる間も明易き 龍之介

よみたらぬじやがたら文や明易き 龍之介

明易きみずに大魚の行き来かな 龍之介

霊泉にシヤボンつかふや明易し 普羅

町中にある踏切や明易き 播水

明やすや響きそめたる老の咳 虚子

虞美人草のしきりに曲り明易し 普羅

明易き人の出入や麻暖簾 普羅

旅人のみな袴ぬぐや明易し 普羅

明易や雲が渦まく駒ケ嶽 普羅

鏡借りて発つ髪捲くや明けやすき 久女