哥なくてきぬぎぬつらし時鳥
蝸牛のかくれ顔なる葉うら哉
出る杭のうつつなき身やかたつぶり
水底の草にこがるるほたる哉
橘のかごとがましきあはせかな
山に添うて小舟漕行若ばかな
ことば多く早瓜くるる女かな
藻の花や片われからの月もすむ
虹を吐てひらかんとする牡丹かな
銭亀や青砥もしらぬ山清水
袷着て身は世にありのすさび哉
床涼み笠着連歌のもどり哉
わするなよほどは雲助ほととぎす
かしこにてきのふも啼ぬかんこどり
掴みとりて心の闇のほたる哉
帋燭して廊下過るやさつき雨
葛水や鏡に息のかかる時
葛水に見る影もなき翁かな
宗鑑に葛水給ふ大臣かな
昼がほやすみれの後のゆかしさよ
日枝の日をはたち重ねてぼたん哉
飛蟻とぶや富士の裾野の小家より
すずしさをあつめて四つの山おろし
涼さやかしこき人の歩行渉り
我影を浅瀬に踏みてすずみかな
塵塚の髑髏にあける青田かな
あだ花は雨にうたれて瓜ばたけ