和歌と俳句

與謝蕪村

6 7 8 9 10 11 12 13 14 15

哥なくてきぬぎぬつらし時鳥

蝸牛のかくれ顔なる葉うら哉

出る杭のうつつなき身やかたつぶり

水底の草にこがるるほたる

橘のかごとがましきあはせかな

山に添うて小舟漕行若ばかな

ことば多く早瓜くるる女かな

みじか夜伏見の戸ぼそ淀の窓

明やすき夜をかくしてや東山

藻の花や片われからの月もすむ

虹を吐てひらかんとする牡丹かな

銭亀や青砥もしらぬ山清水

着て身は世にありのすさび哉

床涼み笠着連歌のもどり哉

わするなよほどは雲助ほととぎす

かしこにてきのふも啼ぬかんこどり

掴みとりて心の闇のほたる

帋燭して廊下過るやさつき雨

葛水や鏡に息のかかる時

葛水に見る影もなき翁かな

宗鑑に葛水給ふ大臣かな

昼がほやすみれの後のゆかしさよ

日枝の日をはたち重ねてぼたん

飛蟻とぶや富士の裾野の小家より

すずしさをあつめて四つの山おろし

涼さやかしこき人の歩行渉り

我影を浅瀬に踏みてすずみかな

塵塚の髑髏にあける青田かな

あだ花は雨にうたれて瓜ばたけ