岸根行帆はおそろしき若葉哉
静さや清水ふみわたる武者草鞋
夜水とる里人の声や夏の月
閻王に勘当うけて夕すずみ
仏印の古きもたへや蓮の花
蓮池の田風にしらむ葉裏かな
石陣のほとり過けり夏の月
寂として客の絶間のぼたん哉
地車のとどろとひびく牡丹かな
たちばなのかはたれ時や古館
雲のみね四沢の水の涸てより
曠野ゆく身に近づくや雲の峰
異艸も刈捨ぬ家の牡丹かな
みじか夜やいとま給る白拍子
来て見れば夕の桜実となりぬ
実ざくらや死のこりたる菴の主
粽解て芦吹風の音聞ん
路たえて香にせまり咲いばらかな
蝸牛の住はてし宿やうつせ貝
みじか夜や浅瀬にのこる月一片
山吹のうの花の後や花いばら
麦刈ぬ近道来ませ法の杖
蝉鳴や行者の過る午の刻
わくらばに取付て蝉のもぬけ哉
翻る蝉の諸羽や比枝おろし