和歌と俳句

與謝蕪村

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主しれぬ手に取酒宴かな

行々てここに行々夏野かな

吹き殻の浮葉にけぶる蓮見哉

雨乞に曇る国司のなみだ哉

負腹の守敏を降らす旱かな

大粒な雨は祈りの奇特かな

鳥稀に水また遠しせみの声

鮒鮓の便も遠き夏野

いささかな料理出来たり土用干

重荷もち丁身をなく夏野かな

葉櫻や碁氣になりゆく奈良の京

辻駕によき人のせつころもがへ

こもろがへ印籠買に所化二人

更衣野路の人はつかに白し

たのもしき矢数のぬしの

痩脛の毛に微風あり更衣

うへ見へぬ笠置の森やかんこどり

足跡を字にもよまれず閑古鳥

むつかしき鳩の礼儀やかんこどり

不二ひとつうづみ残してわかばかな

更衣いはけなき身の田むし哉

花なくてかくれよき木やかんこ鳥

那須七騎弓矢に遊ぶかな

榎から榎へ飛やかんこ鳥

やどり木の目を覚したる若葉かな