主しれぬ扇手に取酒宴かな
行々てここに行々夏野かな
吹き殻の浮葉にけぶる蓮見哉
雨乞に曇る国司のなみだ哉
負腹の守敏を降らす旱かな
大粒な雨は祈りの奇特かな
鳥稀に水また遠しせみの声
鮒鮓の便も遠き夏野哉
いささかな料理出来たり土用干
重荷もち丁身をなく夏野かな
辻駕によき人のせつころもがへ
こもろがへ印籠買に所化二人
更衣野路の人はつかに白し
たのもしき矢数のぬしの袷哉
痩脛の毛に微風あり更衣
うへ見へぬ笠置の森やかんこどり
足跡を字にもよまれず閑古鳥
むつかしき鳩の礼儀やかんこどり
更衣いはけなき身の田むし哉
花なくてかくれよき木やかんこ鳥
那須七騎弓矢に遊ぶ袷かな
榎から榎へ飛やかんこ鳥
やどり木の目を覚したる若葉かな