和歌と俳句

炭 太祇

目を明て聞て居る也四方の春

鰒喰し我にもあらぬ雑煮

元日の居ご ゝろや世にふる畳

元朝や鼠顔出すもの ゝ愛

年玉や利ぬくすりの医三代

とし玉や杓子数添ふ草の庵

げにも春寐過しぬれど初日影

初寅や慾つらあかき山おろし

万歳や舞おさめたるしたり顔

万歳やめしのふきたつ寵の前

羽つくや用意おかしき立まはり

北山やしざりしざりて残る雪

家遠き大竹はらや残る雪

梅活て月とも侘んともし影

虚無僧のあやしく立り塀の梅

春もやゝ遠目に白しむめの花

な折そと折てくれけり園の梅

紅梅の散るやわらべの帋つ ゝみ

紅梅や大きな弥陀に光さす

紅梅や公家町ごしの日枝の山

東風吹とかたりもぞ行主と従者

春風や薙刀持の目八分

糊おける絹に東風行門辺哉

情なふ蛤乾く余寒かな

色いろに谷のこたへる雪解かな