和歌と俳句

炭 太祇

物かたき老の化粧や衣更

いとほしい痩子の裾や更衣

能答ふわか侍や青すだれ

盗れし牡丹に逢り明る年

夜渡る川のめあてや夏木立

甘き香は何の花ぞも夏木立

孑孑やてる日に乾く根なし水

影清は地主祭にも七兵衛

余花もあらむ子に教へ行神路山

西風の若葉をしほるしなへかな

みじか夜や今朝関守のふくれ面

青梅のにほひ侘しくもなかりけり

青梅や女のすなる飯の菜

傘焼し其日も来けり乕が雨

さみだれの漏て出て行庵かな

つれづれに水風呂たくや五月雨

帰来る夫の咽ぶ蚊やりかな

事よせて蚊屋へさし出す腕かな

蚊屋く ゞる今更老が不調法

やさしやな田を植るにも母の側

早乙女や先へ下リたつ年の程

飛蛍あれといはむもひとりかな

三布に寐て蚊屋越の蚊に喰れけむ

月かけて竹植し日のはし居哉

追もどす坊主が手にもかな