和歌と俳句

炭 太祇

かけてもどるよそめや駕の内

碓の幕にかくるゝかな

低く居て富貴をたもつ牡丹

門へ来し花屋にみせるぼたん

切る人やうけとる人や燕子花

深山路を出抜てあかし麦の秋

麦秋や馬に出て行馬鹿息子

を堀部弥兵衛や年の功

筍のすへ筍や丈あまり

白罌粟や片山里の朦の中

牡丹一輪筒に傾く日数かな

さつき咲庭や岩根の黴ながら

濡ともと幟立けり朝のさま

くらべ馬顔みへぬ迄誉にけり

なぐさめて解なり母の前

物に飽くこゝろ耻かし茄子汁

列立て火影行鵜や夜の水

いで来たる硯の蝿の一つかみ

姫顔に生し立けむ瓜ばたけ

盗人に出合ふ狐や瓜ばたけ

二階から物のいひたや鉾の児

あふぎける団を腕に敷寐かな

書棄し歌もこし折うちは

扇とる手へもてなしのうちは

貯ともなくて数あるあふぎ