和歌と俳句

炭 太祇

立むかふ広間代りや更衣

ほと ゝぎす今見し人へ文使ひ

卯の花はまはりこくらの垣根かな

かきつばたやがて田へとる池の水

切るひとの帯とらへけり杜若

湖へ神輿さし出てほとゝぎす

ほとゝぎす江戸のむかしを夢の内

年よらぬ顔ならべたやはつ鰹

灌仏や仮リに刻し小刀目

新茶煮る暁おきや仏生会

麦秋や埃にかすむ昼の鐘

あまた の血にふくれ居る座禅哉

蝿を打おとや隣もきのふけふ

年よれば疲もをかし更衣

濃く薄く奥ある色や谷若ば

ほり上てあやめ葺けり草の庵

川風に水打ながす晒かな

葉ざくらのひと木淋しや堂の前

あら浪に とまりけり船の腹

穂にむせぶ咳もさはがしむぎの秋

麦を打ほこりの先に聟舅

みじか夜やむりに寐ならふ老心

雨に倦く人もこそあれかきつばた

泥の干る池あたらしや杜若

うつす手に光る蛍や指のまた