立むかふ広間代りや更衣
ほと ゝぎす今見し人へ文使ひ
卯の花はまはりこくらの垣根かな
かきつばたやがて田へとる池の水
切るひとの帯とらへけり杜若
湖へ神輿さし出てほとゝぎす
ほとゝぎす江戸のむかしを夢の内
年よらぬ顔ならべたやはつ鰹
灌仏や仮リに刻し小刀目
新茶煮る暁おきや仏生会
麦秋や埃にかすむ昼の鐘
あまた 蚊の血にふくれ居る座禅哉
蝿を打おとや隣もきのふけふ
年よれば疲もをかし更衣
濃く薄く奥ある色や谷若ば
ほり上てあやめ葺けり草の庵
川風に水打ながす晒かな
葉ざくらのひと木淋しや堂の前
あら浪に 蝿とまりけり船の腹
穂にむせぶ咳もさはがしむぎの秋
麦を打ほこりの先に聟舅
みじか夜やむりに寐ならふ老心
雨に倦く人もこそあれかきつばた
泥の干る池あたらしや杜若
うつす手に光る蛍や指のまた