万葉集巻七
住吉の浅沢小野のかきつはた衣に摺り付け着む日知らずも
万葉集巻十
我れのみやかく恋すらむかきつはた丹つらふ妹はいかにかあるらむ
家持
かきつばた衣に摺り付けますらをの着襲ひ猟する月は来にけり
後撰集 良岑義方
いひそめし昔のやどの杜若色ばかりこそかたみなりけれ
西行
沼水にしげる眞菰のわかれぬを咲き隔てたるかきつばたかな
西行
つくりすて荒らしはてたる澤小田にさかりにさける杜若かな
杜若にたりやにたり水の影 芭蕉
杜若われに発句のおもひあり 芭蕉
杜若語るも旅のひとつ哉 芭蕉
有難きすがた拝まんかきつばた 芭蕉
杜若花あるうちは降れ曇れ 杉風
浅井戸にそつとすすぐや杜若 北枝
むかしにも似かよふ影やかきつばた 千代女
卯の花の影三つよつやかきつばた 千代女
水の書水の消したり杜若 千代女
面影のかはるを果やかきつばた 千代女
萍の身はまたおもしかきつばた 千代女
宵々の雨に音なし杜若 蕪村
かきつばたべたりと鳶のたれてける 蕪村
今朝見れば白きも咲けり杜若 蕪村
鍵の手の寺前の池やかきつばた 召波
むかし女はらからすめり杜若 暁台
かきつばた穂麦の髭に立ならび 暁台
かきつばたやがて田へとる池の水 太祇
切るひとの帯とらへけり杜若 太祇
雨に倦く人もこそあれかきつばた 太祇
泥の干る池あたらしや杜若 太祇
雨の日は行かれぬ橋やかきつばた 太祇
杜若ものゝすゞしきはじめ哉 青蘿
鴛鴦のかざしの花かかきつばた 青蘿
旅人にすれし家鴨や杜若 一茶
赤犬の欠伸の先やかきつばた 一茶
五月雨や天水桶のかきつばた 一茶