寐心や膝の上なる土用雲
活鯵や江戸潮近き昼の月
打水や挑灯しらむ朝参り
信州路の田植過けり几巾
里の女や麦にやつれしうしろ帯
夏山の膏ぎつたる月よ哉
浮嶋やうごきながらの蝉時雨
御馬の汗さまさする木陰哉
宵越のとうふ明りや蚊のさはぐ
海見えて一汗入る木陰哉
川狩のうしろ明りの木立哉
はいかいの地獄はそこか閑古鳥
旅人にすれし家鴨や杜若
行々しどこが葛西の行留り
雷のごろつく中を行々し
卯の花や水の明りになく蛙
淋しさに蠣殻ふみぬ花卯木
冷し瓜二日たてども誰も来ぬ
うら町は夜水かかりぬ夏の月
石原や照つけらるる蝸牛
雲の峰立や野中の握飯
舟板に凉風吹けどひだるさよ
朝やけがよろこばしいか蝸牛
身一つや死ば簾の青いうち