蚊いぶしもなぐさみになるひとり哉
大の字に寝て凉しさよ淋しさよ
行な蛍都は夜もやかましき
蝉なくや我家も石になるやうに
蚤の迹それもわかきはうつくしき
旅人や山に腰かけて心太
たのもしや西紅の雲の峰
麻の葉に借銭書て流しけり
何事の一分別ぞ蝸牛
夕月や大肌ぬいでかたつぶり
一尺の滝も凉しや心太
人来たら蛙となれよ冷し瓜
投出した足の先也雲の峰
鵜舟から日暮広がるやうす哉
とうふ屋が来る昼皃が咲にけり
蚤蝿にあなどられつつけふも暮ぬ
蝸牛見よ見よおのが影ぼふし
死んだならおれが日を鳴け閑古鳥
三日月に天窓うつなよほととぎす
うす甘い花の咲けりかんこ鳥
灰汁の水が澄きるわか葉哉
おもしろいよるは昔也更衣
世に倦た皃をしつつも更衣
蚊柱の穴から見ゆる都哉