和歌と俳句

横井也有

十一

柱にもまたるゝ花やはつ暦

鬼を山が笑ひかへすや明の春

君よりは身のため寒し若菜売

蓬莱に見るや浮世の慾ぞろへ

老の腰摘にもた ゝくかな

公家の手に豆出かしたる子の日

此村に一えだ咲きぬ梅の華

がゝや耳かく猫の影ぼうし

花散て葉のなき梅の又寒し

傘にふり下駄に消けり春の雪

まだ去年の暦も棚に寒さ哉

珍しう蚤のくふ夜や春の雨

黄鳥や二声めには余所の藪

武者絵にはあしらひにくき

屋根ふきにたばねられたる柳哉

障子には夜明のいろや朧月

三日月のしばらくながら かな

鶏にかげろふもゆる垣根哉

出代の伊達やこゝろの浅黄うら

出がはりや行燈に残す針の跡