和歌と俳句

横井也有

十一

牛の背にあられ走るや年の市

実に泣傾城もありとしの暮

傘持て出たれば逢はぬしぐれ

相傘に片袖づゝをしぐれかな

二三枚絵馬見て晴るしぐれかな

八景のうちふたつみつしぐれけり

鶯の其手はくわぬ小春かな

拍手もかれ行森や神無月

木がらしや風に有名の呼びじまい

こちの木を隣でもはく落ば

朝々の釣瓶に上がる落葉かな

木に置て見たより多き落葉哉

五六羽の鴉下り居る枯の

根深煮る色こそ見へね冬籠

茗荷畑ありしあたりか忘れ花

其寒さ煮て取かへせ大根引

霜を踏む世わたり辛し大根引

茶の花や是から寺の畑ざかひ

木守の柚に来て啼やみそさゞゐ

釣針の智恵にか ゝらぬ海鼠

一日の炭撫減らす火桶かな

夢よりは先へさめたる湯婆

朝めしに三度鼻かむさむさ

飛鳥川けふもきのふの氷哉

雪の夜や鐘つく人もあれぱある

業平も何ぞと問はで千どり