牛の背にあられ走るや年の市
実に泣傾城もありとしの暮
傘持て出たれば逢はぬしぐれ哉
相傘に片袖づゝをしぐれかな
二三枚絵馬見て晴るしぐれかな
八景のうちふたつみつしぐれけり
鶯の其手はくわぬ小春かな
拍手もかれ行森や神無月
木がらしや風に有名の呼びじまい
こちの木を隣でもはく落ば哉
朝々の釣瓶に上がる落葉かな
木に置て見たより多き落葉哉
五六羽の鴉下り居る枯の哉
根深煮る色こそ見へね冬籠
茗荷畑ありしあたりか忘れ花
其寒さ煮て取かへせ大根引
霜を踏む世わたり辛し大根引
茶の花や是から寺の畑ざかひ
木守の柚に来て啼やみそさゞゐ
釣針の智恵にか ゝらぬ海鼠哉
一日の炭撫減らす火桶かな
夢よりは先へさめたる湯婆哉
朝めしに三度鼻かむさむさ哉
飛鳥川けふもきのふの氷哉
雪の夜や鐘つく人もあれぱある
業平も何ぞと問はで千どり哉