菜の花や揚ゆく駕の片簾
売捨に出るやきのふの田螺取
涅槃会やされども雁は生別れ
蛤の茶屋も吐べき潮干哉
名を呼べば口紅はげて桃の花
ひなの日や蔵から都遷しあり
一本にかたまる人やおそ桜
袷縫ふまどに盛やおそ桜
山吹やとへばこたへの比丘尼寺
実のために枝曲られて梨子の花
折る人に秋の欲なし梨子の花
今植し桜や世々の春の雲
香久山に赤ひもの干すつ ゝじ哉
躑躅さく谷やさくらのちり所
ゆく春や一寸先は木下やみ
行春や送る門には松もなし