榎本其角
鐘ひとつ売れぬ日はなし江戸の春
日の春をさすがに鶴の歩み哉
元日の炭売十の指黒し
はま弓や当時紅裏四天王
年神に樽の口ぬく小槌かな
松かざり伊勢が家買人は誰
ところうり声大原の里びたり
傀儡師阿波の鳴門と小歌かな
あくる夜も仄かに嬉しよめが君
ゆづり葉や口にふくみて筆始
初夢や額にあつる扇子より
七種や跡にうかるる朝からす
早蕨の七草打は寒からむ
砂植の水菜も来り初若菜
若菜屋が摘や鳥羽田の二十石
百人の雪掻しばし薺ほり
餅花や灯立て壁の影
やぶいりや見にくい銀を父の為
帯せぬぞ神代ならまし踏歌宴
こなたにも女房もたせん水祝
本町やむかひあはせて店おろし