榎本其角
焼鎌を背に暑し田艸取
夏痩や能因ことに小食なり
鴫焼は夕べをしらぬ世界哉
交りのさめて又よし夏料理
松原に田舎祭や昼休み
富士行や網代に火なき夜の小屋
吹降の合羽にそよぐ御祓哉
蝙蝠の物書ちらす羽色哉
あの声でとかげくらふかほととぎす
侘しらに貝吹く僧よ閑古鳥
須まの山うしろに何を諫鼓鳥
明石より神鳴はれて鮓の蓋
艸の戸に我は蓼くふ蛍哉
切られたる夢は誠か蚤の跡
かたつぶり酒の肴に這はせけり
伊勢にても松魚なるべし酒迎
身の秋や赤子もまいる神路山
今幾日秋の夜話を春日山
ちり際は風もたのまずけしの花
馬士起て馬を尋ぬる麦野哉
麻村や家をへだつる水ぐるま