和歌と俳句

榎本其角

秋の空尾上の杉をはなれたり

唐崎へ雀のこもる秋のくれ

宵闇や霧の景色に鳴海潟

庖丁の片袖くらし月の雲

声かれて猿の歯白し峯の月

更々て禰宜の鼾や杉の

住の江や夜芝居過ぎて浦の月

小くらから古郷の月や明石潟

名月や畳の上に松の影

名月や竹を定むるむら雀

十六夜や竜眼にくのから衣

いなづまやきのふは東けふは西

あさぎりに一の鳥居や波の音

秋山や駒もゆるがぬ鞍の上

狼の浮木に乗や秋の水

茸狩や鼻のさきなる哥かるた

かけて待伊予簾もかろし桐の秋

稲こくやひよこを握る藁の中

稲塚のとつかにつづく田守哉

早稲酒や稲荷よひ出す姥がもと

一鍬を手向にとるや新糀

棚経や声のたかきは弟子坊主

生霊酒のさからぬ祖父かな

暮の山遠きを 鹿のすがた哉

山畑の芋ほるあとに伏猪哉

かし鳥に杖を投たるふもと哉



宗鑑 貞徳 季吟 宗因 来山 言水 才麿 鬼貫 芭蕉 素堂 嵐雪 去来 丈草 凡兆 史邦 杉風 荷兮 曾良 路通 越人 土芳 野坡 支考 許六 浪化 惟然 北枝 涼菟 千代女 也有 蕪村 召波 暁台 白雄 太祇 几董 青蘿 一茶