和歌と俳句

名月

名月や池をめぐりて夜もすがら 芭蕉

名月の出るや五十一ケ条 芭蕉

名月の見所問ん度寝せむ 芭蕉

名月や北国日和定なき 芭蕉

名月はふたつ過ても瀬田の月 芭蕉

名月や門に指くる潮頭 芭蕉

夏かけて名月あつきすずみ哉 芭蕉

名月に麓の霧や田のくもり 芭蕉

名月の花かと見へて棉畠 芭蕉

名月や雨戸を明てとんで出る 鬼貫

名月や畳の上に松の影 其角

名月や竹を定むるむら雀 其角

名月や煙はひ行水の上 嵐雪

名月や椽取まはす黍の虚 去来

名月やたがみにせまる旅心 去来

名月や三年ぶりの如意が嶽 去来

名月や赤穂の汐くみいとまなみ 許六

名月や盧山の芋に雨の音 許六

名月や膳にすゑたる東山 支考

名月やそのうらも見る丸硯 千代女

名月や何所までのばす富士の裾

名月や雨を溜たる池のうえ 蕪村

名月やうさぎのわたる諏訪の海 蕪村

名月や夜は人住ぬ峰の茶屋 蕪村

名月や露にぬれぬは露ばかり 蕪村

名月や神泉苑の魚躍る 蕪村

名月や君かねてより寝ぬ病 太祇

名月や花屋寐てゐる門の松 太祇

名月や船なき磯の岩づたひ 太祇

名月や此松陰の硯水 召波

名月に辻の地蔵のともし哉 召波

名月や厠にて詩の案じくせ 召波

名月や墨摺くだす古瓦 白雄

名月や朱雀の鬼神たえて出ず 几董

名月や辛崎の松せたのはし 几董

名月や蟹のあゆみの目は空に 几董

名月や地に引替る天の川 青蘿

名月や松にかゝれば松の花 青蘿

名月の御覧の通り屑家也 一茶

名月や高観音の御ひざ元 一茶

名月や家より出て家に入 一茶

名月や箕ではかり込御さい銭 一茶

名月や西へ向へば善光寺

名月を取つてくれろと泣く子かな

名月や膳に這よる子があらば 一茶